クラシック用語 ヘ
ベーム式
ベーム式(英: Boehm system)とは、クラリネットやフルートなどの木管楽器の鍵盤システムの一つで、1830年代にテオバルト・ベーム(Theobald Boehm)によって開発されたものです。
ベーム式の特徴は、フルートの場合、リングキイ(指輪状のキイ)が使われることです。また、鍵盤の配置や操作方法が改良され、より迅速で正確な演奏が可能となりました。これによって、フルートの音域が拡大し、より複雑な音楽を演奏することができるようになったとされています。
クラリネットにおいても、ベーム式が採用され、より正確で迅速な演奏が可能となりました。また、フルートやクラリネットなど、他の木管楽器にもベーム式が応用され、現代の木管楽器のほとんどが、ベーム式に基づいた鍵盤システムを採用しています。
ベル
「ベル」(bell)は、音楽用語として、打楽器の一種である鐘を指す場合や、管弦楽の楽器編成表で、ホルンやトランペットなどの金管楽器の一部を表す場合があります。
打楽器のベルは、金属製の鐘を指し、その形状や大きさによって様々な種類があります。主に、ハンドベル、タブラベル、スリットドラム、チャペルベル、チューブラーベルなどがあります。ハンドベルは、小さな鐘を手に持って音を出す楽器で、タブラベルは、複数の鐘を組み合わせた楽器で、音域が広くなっています。スリットドラムは、平面的な金属板を横に置き、そこに縦に切れ目を入れている楽器で、音を出すためにハンマーで叩いて演奏します。チャペルベルは、教会で鳴らされる大きな鐘を模した楽器で、音程を変えることができます。チューブラーベルは、直立した管状の金属製鐘で、音域が広く、管楽器のように演奏することができます。
一方、金管楽器のベルは、楽器の形状の最後部分にある広がった金属管を指します。楽器の音の大きさや音質を決定する重要な部分であり、ホルンやトランペット、トロンボーン、チューバなどに用いられます。ベルの形状によって音の特性が異なり、楽器の性能を高めるために様々な形状のベルが開発されています。
ベル・カント
ベル・カント(イタリア語で「美しい歌唱」という意味)は、イタリア・オペラにおける歌唱スタイルの一つで、18世紀から19世紀にかけて最も重要なスタイルとして発展しました。
ベル・カントの特徴は、美しい旋律線と滑らかなフレージング、装飾的な音形や高音域の使用、軽快なリズム感などが挙げられます。また、テクニカルな要素が多く含まれており、高い声域やダイナミックレンジ、長いフレーズを歌い上げるために、豊かな息支配や滑らかなレガート奏法、緻密なタイミング感などが必要とされます。
ベル・カントは、特にソプラノやテノールの歌唱において用いられ、代表的な作曲家としては、ジョアキーノ・ロッシーニやヴィンチェンツォ・ベッリーニ、ガエターノ・ドニゼッティなどが挙げられます。また、ベル・カントは、イタリア以外でも多くの歌手によって愛され、美しい旋律線や高度な技巧を要求することから、クラシック音楽だけでなく、ポップスやジャズなどの様々なジャンルにも影響を与えています。
ベルガマスク
ベルガマスク(Bergamask)は、16世紀にヨーロッパで流行した舞曲の一つで、イタリアのベルガモ出身の人々が踊ったことからこの名がつきました。
ベルガマスクは、3拍子の軽快なリズムに乗って踊られます。主に、男女が対になって踊り、女性はスカートを広げて踊り、男性は細いスティックを持ってステップを踏んだり、舞い上がったりする姿が特徴的です。
また、ベルガマスクは、シェイクスピアの劇『ロミオとジュリエット』の中で有名になりました。劇中で、ベルガマスクの踊りが行われ、主人公のロミオがジュリエットに舞踏会で出会います。この場面は、世界中で有名な恋愛シーンとして知られています。
現代では、ベルガマスクは、中世の風情を感じさせる歴史的な舞踏会や、バロック音楽のコンサートなどで踊られることがあります。
変記号
変記号(sharp)は、音楽の表記法において、音符の上に付ける記号の一つで、その音を半音高くすることを示します。例えば、Cの上に♯を付けた場合、その音はC♯となります。
変記号は、主に調性音楽において用いられます。調性音楽では、各音階に対して規定された音階が存在し、それに沿って曲が構成されます。変記号は、その音階において特定の音を半音高くすることが必要な場合に使用されます。
変記号は、白鍵盤のうち、黒鍵盤の手前にある鍵盤に対応しています。例えば、C♯は、白鍵盤のCと黒鍵盤の間にある鍵盤に対応します。
また、変記号は、曲の中で一時的に音を変化させるためにも使用されます。例えば、転調する場合には、その転調先の音階において必要な音を半音高くすることで、なめらかな移行を実現することができます。
変奏曲
変奏曲(variation)とは、ある主題に基づいて、その主題を様々な形で変化させた曲のことを指します。変奏曲は、クラシック音楽において一般的なジャンルの一つであり、古典派から現代音楽まで、様々な時代・様式の音楽において作曲されています。
変奏曲は、一般的に、最初に提示される主題(テーマ)を基礎として、その主題をリズム、和声、旋律、テンポなどを変化させて表現されます。変奏曲の中には、単一の主題を数十以上の変奏で表現するものもあります。
変奏曲の中には、単一の楽器によるものから、多くの楽器を使用したものまで、様々な編成で作曲されています。また、有名なクラシック曲や民謡などを主題とする変奏曲も多く存在しており、聴衆にも親しみやすいジャンルの一つとして親しまれています。
有名な変奏曲には、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番「熱情」に収録されている「ディアベリの主題による33の変奏曲」や、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」に基づく「美しく青きドナウの変奏曲」、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」などがあります。
ペンタトニック
ペンタトニック(pentatonic)とは、5つの音だけから成る音階のことを指します。音楽の様々な分野で用いられる音階であり、西洋音楽のみならず、世界各地の伝統音楽やポピュラー音楽においても広く使用されています。
ペンタトニックの音階は、通常、全音と短3度の二種類の音程が交互に繰り返される形をしており、そのパターンは多くの文化圏で共通しています。西洋音楽においては、Cを基音とする場合、C、D、E、G、Aの5つの音から成るCペンタトニック、またはAを基音とする場合はA、C、D、E、Gの5つの音から成るAペンタトニックなどが広く用いられます。
ペンタトニックの音階は、そのシンプルな構成から、簡単にメロディーを作ることができ、また、その特徴的な音色から、東洋的な雰囲気を持つ音楽にも適しています。ペンタトニックの音階を用いた有名な楽曲には、「Amazing Grace」、「Greensleeves」、「My Bonnie Lies over the Ocean」などがあります。また、ペンタトニックの音階は、ブルースやロックのギターソロなどでも広く用いられ、音楽的な表現の幅を広げるための基礎となっています。