クラシック用語 カ
カストラート
カストラートは、男性歌手のうち、幼少期に去勢手術を受けた者を指します。この手術によって、成長期において男性ホルモンの影響を受けなくなり、女性と同じような高い声域を保つことができました。カストラート歌手は、バロック期に特に人気がありました。
カストラートは、イタリアのオペラ界で特に重要な存在でした。18世紀初頭には、イタリアのカストラート歌手が、音楽界で最も有名なスターとして知られていました。彼らは、高い音域での表現力豊かな歌唱技術で、人々を魅了しました。
カストラートの声域は、通常の男性歌手よりも高く、ソプラノやメゾソプラノに匹敵する高音域を持っていました。彼らの声は非常に美しく、豊かな倍音があり、特に宗教音楽やバロック期のオペラなどでよく使われました。しかし、去勢手術は非常に危険な手術であり、多くの場合、手術が成功しないこともありました。18世紀末には、カストラート歌手の人気が下降し、やがてこの手術自体が禁止されるようになり、現代ではカストラート歌手は存在しません。
カデンツァ
「カデンツァ」は、クラシック音楽の演奏において、ソリストが自由に即興演奏する部分のことを指します。通常、オーケストラと共演するソリストが、演奏曲の特定の部分で、楽曲の主題を再度引用しながら、即興的に演奏する部分です。
カデンツァは、ソリストの技量や表現力を示す場面として重要な役割を果たします。また、カデンツァは同じ曲でも、演奏者によって異なる演奏が行われるため、その曲の個性を引き出すためにも重要な要素です。
一般的に、カデンツァは曲の終わりに置かれますが、曲中に配置されることもあります。また、バロック期のカデンツァはあらかじめ作曲されたものが多く、ロマン派以降のカデンツァは、ソリスト自身が即興で演奏することが一般的になっています。
カドリーユ
「カドリーユ」は、18世紀フランスの舞踏の一つで、4人が1組となって踊る、円舞曲の一種です。元々は宮廷の儀式や娯楽として舞われ、後に一般市民にも広がりました。
カドリーユは、4人が手をつないで円を作り、1曲ごとに円の中心に入ったり、外に出たりしながら、様々なステップを踏んで踊ります。曲の進行に合わせて、踊り手は円の中心で踊ったり、手を離して一列になったりすることもあります。また、カドリーユは複数のセットが同時に踊られることが多く、複雑なパターンを作り出します。
カドリーユは、華やかな衣装やアクセサリーを身につけ、洗練された動作で踊られます。18世紀のフランスでは、貴族階級や上流市民によって広く愛され、踊りの流行があった時期もありました。現代でも、カドリーユはフランスの伝統文化の一部として、舞踏会や祭りなどで踊られることがあります。
カノン
「カノン」は、音楽用語で、複数の楽器や歌手が順番に同じメロディを演奏する、ポリフォニー(多声部)の技法の一つです。最初のパートが演奏を始めた後、次のパートが同じメロディを演奏し始め、その後、更に次のパートが同じメロディを演奏し続けるという形式がとられます。
カノンは、同じメロディを重ね合わせることで、和声的な響きを生み出します。また、同じメロディを繰り返すことで、聴衆に対して印象的な繰り返しや、楽曲の構造を明確にする効果があります。
代表的なカノンとしては、ヨハン・パッヘルベルの「カノン」が挙げられます。この曲は、8つの音符から成る単純なメロディを、3つのパートが交互に演奏することで構成されています。また、バッハの「鏡の中のカノン」など、複数の楽器が同じメロディを演奏することで、鏡像的な響きを生み出すカノンも存在します。
カプリッチオ
「カプリッチオ」(Capriccio)は、音楽用語で、自由な形式で書かれた器楽曲や声楽曲のことを指します。しばしば、独創的で複雑な音楽的アイデアや技術的な要素を多用した作品として知られています。
また、演奏家の技巧や表現力を試すために書かれることもあります。代表的なカプリッチオ作品には、ニコロ・パガニーニの「24のカプリッチオ」や、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」があります。