クラシック用語 シ
純正律
「純正律」とは、音律の一つで、倍音級数に基づいて音高を定める律法のことを指します。倍音級数とは、ある音の周波数に対して、その周波数の2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍……という周波数を持つ音のことです。
純正律は、西洋音楽の歴史においては古くから使われていた音律であり、中世やルネサンス期には広く使われていました。ただし、純正律では、すべての音が完全な倍音級数に基づいて調律されているため、ある調においては純正律における全ての音が使用されるわけではありません。そのため、さまざまな調において音が微妙にずれて聞こえることがあります。
現代の西洋音楽においては、純正律はほとんど使われていません。代わりに、平均律という音律が広く使われています。平均律は、12の等分された半音でオクターブを構成することによって、すべての調において均等な音程を実現する音律です。純正律に比べ、すべての調で音がほぼ同じ高さで鳴るため、現代の西洋音楽においてはより柔軟で使いやすいとされています。
序曲
「序曲」とは、オペラやバレエ、劇音楽などの演奏会用の舞台音楽において、開演前に演奏される曲のことを指します。曲の冒頭に位置することが多いため、序曲と名付けられています。
序曲は、その演目の舞台背景やテーマを表現するために作曲されることが多く、しばしば劇的で壮大な音楽になっています。また、序曲は短い場合でも数分から十数分ほどの長さがあり、演奏時間が許す限り表現力豊かに演奏されることが多いため、オーケストラや管弦楽団などの大所帯の編成が用いられることが多いです。
有名な序曲としては、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の序曲や、ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」の序曲、チャイコフスキーのバレエ音楽「白鳥の湖」の序曲などが挙げられます。
四六の和音
「四六の和音」とは、西洋音楽における和声の一種で、主にバロック期(17世紀後半から18世紀前半)の音楽で用いられた和音です。四六の和音は、根音を中心に、その上に第3音と第5音を加えた3和音です。具体的には、Cの場合はC(根音)、E(第3音)、G(第5音)の音を同時に鳴らした和音です。
四六の和音は、第3音と第5音が根音から3度・5度の関係にあるため、比較的安定感があり、和声進行の基本となる和音の一つです。また、四六の和音は、同一の和音が続くような和声進行においても、その和音の響きが変わりすぎず、聴きやすいという特徴があります。
例えば、Cの場合、C-G-Am(AはCの属7th)という和声進行では、C-Gという四六の和音が2つ続いています。
四六の和音は、バロック音楽に限らず、古典派音楽やロマン派音楽においても頻繁に使われる和音であり、和声理論の基礎的な和音の一つとして覚えておくと良いでしょう。
新ウィーン楽派
新ウィーン楽派(Neue Wiener Schule)は、20世紀初頭にウィーンで興った現代音楽の運動です。主要な作曲家に、アルノルト・シェーンベルク、アルバン・ベルク、アントン・フォン・ウェーベルンらがいます。
新ウィーン楽派は、従来の和声的な音楽の様式に対する反発から生まれました。シェーンベルクは、自分の作品において和声を完全に捨て、自由な音列を用いる「十二音技法」を確立しました。これは、音楽においてそれまで重要視されていた調性に代わるもので、12の音を順序立てて並べ、それを基本として作曲する方法です。
一方、ベルクは、シェーンベルクの十二音技法を用いつつも、調性的な要素を残した作品を残しました。また、ウェーベルンは、十二音技法を更に発展させ、音色やリズムの特徴を強調する作品を残しました。
新ウィーン楽派は、当初は批判や不評を浴びましたが、後に現代音楽の重要な運動の一つとして認知され、その影響は現代音楽に至るまで続いています。
新古典主義
新古典主義(Neoclassicism)は、20世紀初頭に現れた音楽の様式です。新古典主義音楽は、18世紀のバロック音楽や古典派音楽の様式を取り入れつつ、同時代の音楽の技法や表現法を加えたものとされています。
新古典主義の代表的な作曲家としては、イーゴリ・ストラヴィンスキー、セルゲイ・プロコフィエフ、ポール・ヒンデミット、ダリウス・ミヨーなどがいます。ストラヴィンスキーの『ピッコロ・コンチェルト』や『兵士の物語』、プロコフィエフの『古風な組曲』や『ピアノ協奏曲第3番』、ヒンデミットの『ピッフルの友だち』などが、代表的な新古典主義音楽とされています。
新古典主義音楽は、19世紀末から20世紀初頭にかけての音楽に対する反動として、古典主義の様式を再評価し、その中に新しい技法や表現法を取り入れようとするものでした。これは、当時の近代音楽の複雑さや不協和音、非常識な音楽表現に対する反発としても理解されています。